頭の中で柴田理恵を泣かせるな
小さい頃、脳内にナレーションとスタジオがあった話。
親に理不尽な事で怒られた時とか、風呂場ですっ転んだ時とか、そういう時に決まって頭の中にナレーターのおじさんが出てきた。
「彼の壮絶な人生はいつまで続くのか……」
みたいな事をとてもいい声で言ってた。
「彼が一体何をしたというのか……」
とかね。お前が怒られることをしたんだよ。
その後にきまって頭の中でスタジオにシーンが移る。
あー……っていう僕を憐れむ声。
そして、
柴田理恵が号泣してる。
いっっっっつも
柴田理恵が号泣してる。
大人になって(大人が何かって話は今はさておき)考えると、やっぱり小さい頃の僕は常に被害者でいたかったんだろうなあって思う。
今はナレーターも柴田理恵も出てこない。
被害者でいる事は簡単。
だけどやっぱり、こういう事をされました!って声を荒らげるんじゃなくて、こうしたからこうなったって冷静に考えられるようになれたらいいなって、思うようになった。
今の僕は冷静な考えができてる訳ではなくて、ただただナレーターと柴田理恵が出てこないだけ。
柴田理恵を泣かせない人間になりたい。
おわり